古い土蔵の、重い扉の中のアート空間と一期一会。
上ノ橋付近から肴町あたりを徘徊していることが多いので、この土蔵もいつも気になっていました。
今日はタイミングがよかったので思い切って覗いてみたのですが、いい出会いがありました!
これだからお散歩はやめられませんね。
盛岡に来て「一期一会」という言葉の意味がやっとなんとなく分かるようになりました。
初めての場所でも訪れてみる、知らない人でも話しかけてみる。
ちょっとしたきっかけで、想像もしなかった新しい何かに出会うことができます。
盛岡のアート情報はここでゲット。
入ってすぐ左手の壁にはたくさんのポスターが貼られていました。
盛岡では生きた情報をネットで入手しづらい傾向があります。
盛岡では昔からの繋がりが今でも十分に機能していて、webサイトなんてなくても必要な情報を手に入れられるからなのですが(実際に自分のサイトを持っていないレストラン、お店がほとんどです)、私のように違う土地から来た人は困ることもあると思います。
実際私も、はじめはそうでしたwそのためにもこのサイトが役に立つことを願いながら書いています。
「蒸しパン」と思いました。
今日ギャラリーで開催されていたのは田村晴樹さんの水彩画展。
ちいさいギャラリー内いっぱいに独特のやさしい色合いの絵が38点も展示されていました。
ちょっとあったかくて、触ると低反発で、甘いにおいのしそうな絵たち。
使われている紙の凹凸がまたぴったり。
穴が空いているような描写が多かったので、私にとっては「蒸しパン」に似た手触りでした。
幸運なことにご本人もいらっしゃってお話を聞くことが出来ました。
田村晴樹さんご本人とのおしゃべりも、個展の醍醐味。
八戸生まれで、岩手大学教育学部特設美術科出身、そのまま40年盛岡にすんでいらっしゃるとのこと。
ここにも盛岡が好きになってしまった先輩がまたひとり。
まぎれもなくこれらの絵を描いたと思われる、同じようにあたたかでやさしい雰囲気の方でした。
ここにあるほとんどの絵がこの一月の間にこの展示会用に描いたもので、心にあった描きたいものを一気にアウトプットしたのだそう。よく見ると1日に何枚も描いている日もあります。
今日一番のお気に入り。
今回の絵の中で一番好きだったのはこの絵でした。
タイトルがまたいいのです。
「帰る」
か、かっこええ…。
特定の山を描いたわけではないそうですが、私には岩手山にみえます。
きらりと尖った水滴は、落ちているようにも、登っているようにも思えて、きりっとした自然の意思が感じられて好きだと思いました。
自分が描きたかったことをわかってくれると嬉しいけど、自分が思いもしなかった視点で捉えてもらえるのも、また面白いとおっしゃっていた田村さん。
私にとって、ここで出会った「蒸しパン」は、誰もが生まれた時から持っている、不完全な心みたいに見えました。
理由は自分でもわからないのに、何故か時々無性にさみしくなる時があるのは、もともと心ってものはあたたかくて、やわらかくて、ちいさな穴がいっぱい開いている蒸しパンだから。
そっか、そうだったのか。とてもいい絵たちといい人に出会えたな。価値ある一日です。
田村晴樹水彩画展「ギャラリー彩園子」での展示は30日(土)まで。
そのあと12月2日(月)〜14日(土)は紺屋町のクラムボンでも開催されます。
いずれも無料。
ぜひあなたの心の蒸しパンに出会ってください。